障害年金について必ず知っておくべきこと(追記アリ

たまには役に立つことも書くかにゃー。
多くのヒトタチは、「障害者」と「健常者」のあいだに線引きをして、自分がなーんとなく「健常者」の側にいるような気がしているものですにゃ。
自分あるいは家族が現実的に障害者に相当していて障害年金の受給資格があるのに、もらい損ねているという事例がけっこうあるのは、そのあたりにも一因があるのかもしれませんにゃー。

1)内臓疾患・血液疾患・精神疾患でも障害年金は受給できる

このエントリを書こうと思ったのは、身近に内臓疾患や精神疾患障害年金が受給できることがわかってにゃー知りあいがいたからですにゃ。多くの疾患で障害年金の受給資格があることは、
http://www.matsui-sr.com/nenkin/shougai.htm
あたりを参照していただければ概要はわかるのではにゃーかと。


リンク先を見ての通り

  • 眼の障害・聴覚、鼻腔機能、平衡機能の障害・そしゃく・嚥下機能、言語機能の障害・肢体の障害・精神の障害・呼吸器疾患の障害・循環器疾患の障害・腎疾患、肝疾患、糖尿病の障害・血液・造血器、その他の障害

と、ほとんどのケガ・病気による障害が年金の給付対象になっていますにゃ。特に「血液・造血器、その他の障害」の項を見てもらえばわかるけど「悪性新生物」すなわちガンによる障害もちゃんと給付対象になっていますにゃ。また、統合失調症や、うつ病でも受給は可能ですからにゃ。

2)どの程度の障害で受給できるのか

肢体の障害であれば、例えば両手の指が全部なければ1級だとか具体的な基準が公開されていますにゃ。内臓疾患・血液疾患・精神疾患などで共通しているのは、乱暴にいうと

  • 1級 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就寝を強いられ、活動の範囲が概ねベッド周辺に限られるもの。
  • 2級 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要。日常生活に著しい制限がある。寝たり起きたり。
  • 3級 時に介助が必要なことあり。労働に制限があるが、軽労働・軽作業は可能

で、内臓疾患・血液疾患では、血液検査などの数値がどれくらいの範囲ならば障害と認められるのかも公開されていますにゃー。


問題は、国民年金においては、1・2級の障害年金しか受給できにゃーことなんですにゃー。3級の障害年金は存在してにゃーの。3級があるのは、厚生年金・共済だけなんですにゃ。

3)いくらもらえるのか?

細かい金額は、障害年金の額は?〜権利としての障害年金〜障害年金.comを参照。【 】内は厚生年金被保険者のみ。

厚生年金に加入しているか否かで大きな差がつくことが一目瞭然ですにゃ。派遣で厚生年金に加入させなかったり、擬装請負なんかは、立法趣旨からいってももっと厳しく取り締まらなくてはならにゃーのだが。日本の大企業様はホントにヤクザとかわらにゃーもんな。
また、2級と3級では天国と地獄ですにゃ。国民年金だけしか加入してにゃー場合、3級では受給できにゃーわけだ。

これっぽっちしか出ないともいえるけど、全額非課税で、障害がある限り死ぬまで受給できるのですにゃ。
それと、最大5年分まで過去にさかのぼって支給されますにゃ。けっこうデカイよ。

4)受給できるための条件は?

  • 原則 初診日の前日に、20歳誕生月から初診月の前々月までの全期間のうち保険料滞納期間が3分の1以下

つまり、20歳になってから初診日の前日までの期間の2/3以上払っているか免除申請していればよい。

  • 特例 初診日の前日において、初診日の前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと

この特例は救済措置。つまり、ここ1年で支払っているか免除申請していればよい。


給付の対象となる障害の原因となる傷病についての、初診日の【前日】までの保険料納入実績で判断されますにゃ。というのも、年金保険料の支払い時効は2年であるからなのですにゃ。やばい病気やケガになったその日に、過去にさかのぼって支払えば年金をもらうことができるからなのですにゃ。


要するに、初診日の前日に、この1年の保険料滞納がないか・免除申請していれば、あとは障害次第で障害年金がおりる条件が整うわけですにゃ。ここでポイントとなるのは、免除申請をしていても障害年金は【全額】でることですにゃ。
老齢年金については、支払いを免除したらもらう額が少なくなるんだけど、障害年金については全額でるというところは押さえておこう。

5)免除申請って?

今年度の国民年金保険料は、1人当たり14,410円。その保障内容を考慮すると民間の保険では決してありえにゃーパフォーマンスではあるんだけど、ビンボー人にはきついよにゃ。
というわけで、免除申請の制度がありますにゃ。詳細は国民年金の免除制度のご案内 | 彦根市
ここで基準となっているのは収入金額ではなく所得金額であることに注意ね。収入から必要経費を差し引いたのが所得ですにゃ。サラリーマンなどの給与所得者は、給与所得控除というものがありますにゃ。給与所得控除とは を参照。


例えば
【月々額面20万円、ボーナスなし、社会保険加入なしの一人暮らし。とりあえず健康】
を想定してみますにゃ。よくある程度の劣悪な労働条件にゃんな。
年収240万−(給与所得控除240万×0.3+18万)=150万
はい、他に何の控除がなくても、1/4免除にゃんね。誰か1人扶養していたら1/2免除ですにゃ。バイト年収が122万以下の一人暮らしは全額免除になりますにゃ。それに、健康保険料などは全額が所得から控除されますにゃ。
まあ、これはあくまで給与所得控除を使った場合であり、フリーターなんかで必要経費の領収書をすべて確保して確定申告するのであれば、もっと大きな収入であっても免除は大きくできると思われますにゃー。
ただし、これは親と同居していて親に収入があるなどの場合は使えませんにゃ。


また、免除申請においてのポイントは、

  • 過去にさかのぼって(最大1年間)の免除が認められる

手続き上の問題で、7月までさかのぼって認められますにゃ。


もうひとつ重要なことにゃんが

  • 学生納付特例・若年者納付猶予の制度

ですにゃ。この期間は老齢年金の給付には関係にゃーのだが、障害年金の受給対象にはなるのですにゃ。若年者猶予の場合は、申請免除とちがって親の所得は無関係に自分と配偶者の所得だけで判断されますにゃ。学生納付特例の場合は、配偶者の所得すら無関係にゃんね。*1


この、学生納付特例絡みで、障害年金の無年金者がでて問題となっていましたにゃ。
http://ni_munenkin.at.infoseek.co.jp/gakusei.htmlを参照のこと。
学生・院生は学生納付特例申請をしているかどうか必ず確認すること。老齢年金給付には関係にゃーが(将来カネを稼いだら10年分追納できる特典があり、その場合は老齢年金が増えるけど)、障害年金については、この申請の有無でオール・オア・ナッシングですにゃ。内臓疾患・精神疾患であっても、障害がある限り死ぬまで全額出るんだぜ。


免除にひっかかりそうな金額なのに全額払っていたヒトはすぐに役所に問い合わせるべし。免除に該当するのに払っていなかったヒトは、苦しいだろうが払うことをオススメするにゃ。障害年金はでかいぞ。

6)障害年金の受給を確かなものにするために

障害年金に該当するような障害がありながら、病院の医師や社会福祉士に相談したところ、「障害年金には該当しないだろう」といわれた事例もあるようですにゃ。
また
社会保険事務所の窓口でも、障害年金については詳しいヒトがあまりいにゃーので、詳細もわからずに「障害年金不該当」とされることもあるようにゃんな。


例えば、ポストポリオ。
ポストポリオ症候群の男性/障害厚生年金支給へ/社保審裁決を参照のこと。この記事は2004年のものにゃんが、後に厚労省から通達がでて、ポストポリオにおいては原則的に障害年金が認められるようになったはずなのだにゃ。ところが、各社会保険事務所ではこの通達が徹底されず、ポストポリオの障害者の申請が通らないなどという、あってはならにゃーはずのことがまかりとおったりしているみたい。
他にも、障害者側に不利なことは多いようですにゃ。
心臓疾患における人工弁あるいはペースメーカーをつけている場合、原則3級に該当するんだけど、これはあくまで原則にすぎにゃー。症状によっては2級や1級に該当する場合もあるんだけど、これも役所の「人工弁・ペースメーカー=3級」という思いこみで2級が通らないこととか
あるいは
膠原病、多発性関節リュウマチ、進行性筋ジストロフィー、重症筋無力症、パーキンソン病脊髄小脳変性症脳出血、薬の副作用による大腿骨頭壊死等により、下肢に障害を負っている場合は、ケガなどによる障害と認定基準が異なるのに、不当にきつい認定基準をあてはめられてしまうとか


この手の細かい通達なんかをシロウトがきっちりと追うのはなかなかムツカシイですよにゃ。プロに頼むのがいちばん手っ取り早いのではにゃーかと思われますにゃ。ぐぐればいくつも見つかるけど、障害年金の裁定請求で食っている社会保険労務士がけっこういますにゃ。各県の社会保険労務士会に連絡して、障害年金に強いヒトを紹介してもらうのもいいだろ。相場としては、成功報酬で年金月額の2〜3ヶ月ぶんくらいにゃんね。まともな社労士なら、ちゃんと医師とも会って、通りやすいような診断書作成につきあってくれるはずだから、そのあたりも事前に確認するのがよろしいかと。
役人に書類を通すには、書き方次第というところはどうしてもでてきますよにゃー。


それでダメなら社会保険審査官に審査請求、さらに再審査請求にゃんね。
以前は審査請求や再審査請求はなかなか通らなかったようだけど、最近は医師の見解を尊重するという当然といえば当然の流れもでてきているようなので、状況次第でやる価値はあるのではにゃーでしょうか。それでもダメだと最終的には裁判にゃんな。

7)年金は払っとけ

年金制度が欠陥だらけで役人がクソであることは前提としても、それでも年金は払っておくことを勧めますにゃ。

  • 老齢年金は払った分だけしかでないけれども、一応死ぬまで受給
  • 障害基礎年金は支払額・支払期間に関係なく(厚生障害年金の部分は支払額に連動)、障害がある限り満額受給、全額非課税。
  • 妻と子が残された場合、遺族基礎年金(全額非課税)が年間約100万でる(遺族厚生年金は子のいない妻にも出る)。60以上の親にも出る
  • 免除制度が一応ある


しつこく繰り返すけど、障害基礎年金は支払期間は無関係で、免除を申請をしていても全額受給。これは遺族基礎年金も同じことですにゃ。これは親方日の丸の保険なのですにゃ。直近の1年間に滞納さえなければ出るんだよ。
老齢年金の方はこれからどうなるかわかんにゃーのだが、少なくとも税金で負担する割合が増える方向にいくのはガチだろ。現行制度では半額は税負担ということになっているので、だからこそ全期間にわたって全額免除していたヒトは満額の半分の年金を受けることになるわけですにゃ。ちゃんと免除申請していたヒトの当然の権利にゃんな。逆にいえば、年金を払ってにゃーヒトは、この税金で補填される分が丸損ということになるかにゃ。
「政府が信用できん」という感覚はわかるけど、民間だって信用できにゃーだろ? AIGだってやばかったみたいだし。


そもそも、【税金で半額以上補助される*2】、というだけで、民間の保険では決してありえにゃーコストパフォーマンスが保障されているんだにゃ。しかも免除制度まであるわけで。
公的年金を払わずに、民間の保険や個人年金を払っているヒトもいるようだけど、考え直したほうがいいぜ。

8)まとめとできること

  • 年金をもらうのはジジババだけではない。障害年金と(今回はほとんど触れなかったけど)遺族年金がある
  • 内臓疾患・血液疾患・精神疾患でも障害年金は支給される(初診日と納付要件に注意)
  • 年金を払わないと、補填される税金分を丸損する
  • まるで不十分な補償内容ともいえるが、民間保険でこのパフォーマンスはありえない
  • 税において優遇されている
  • 払えなければ免除制度が使える。この経済状況下、実際に使えるヒトは多いと思う

よって、年金はできるだけ払っとくか、免除申請しとけ。
個人でできるリスク管理としては必須だにゃ。事故米がどうとかより、はるかに現実的なリスクにゃんぞ。
何事もなければ、年をくったときに出るだろ。


また、医療機関にかかったときのレセプトはとっておくこと。
それと、病気やケガになったら、その経過などを自分でもできるだけ詳細に記録しておくと、障害年金の認定とか労災認定においても非常に有利になりえますにゃ。

追記 11月13日12:30ごろ

障害年金について補足と嫌みとTips - 地下生活者の手遊びにて補足などをしました

*1:その他、通常は2年分しか過去分を保険料を納められないが、これらの場合は10年分納められる。これは老齢給付にかかわってくる

*2:運営費や人件費などは税金で出ている