教育にかかるカネと税金

住宅取得に優遇措置、まあいいんじゃね

住宅の取得についてはさまざまな優遇措置がありますにゃ。
http://www.p-plaza.co.jp/magazine/money05.htmlにもあるとおり、居住用の住宅(別荘とかはダメね)を購入・保守するにあたっては、不動産取得税・登録免許税・固定資産税・都市計画税などに優遇措置が、住宅売却にあたっては所得税・住民税の優遇措置がありますにゃ。
加えて、
住宅ローンをつかって居住用住宅を購入した場合、「住宅ローンの残高の1%が、所得税から10年間にわたって控除されます」にゃ。概要はhttp://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/063.htmを参照のこと。


この住宅取得に関する種々の優遇措置について、「金持ち優遇」という声があるようですにゃ。はてさ界隈の言論でもみたことあり。
代々持ち家などもったことのにゃー由緒正しいビンボー人としては、その「金持ち優遇」ってのはイイタイコトはわかるけど、そんなこと言ってもせんないことではにゃーかと。年収3千万以内のヒトが自分の居住用住宅をもつのに優遇があってもいいだろうと思われ。
しかも
住宅を購入するというのは、いろいろと波及効果のおおきい経済行動のようですにゃ。家を購入するにあたり、逡巡するヒトタチにカネを使ってもらうために効果があるのならそれもいいのではにゃーだろうか。住宅購入というのは、庶民としては最大級に高価な買い物ですからにゃー。
カネというのはまわしてナンボ、カネがまわらにゃーと弱者から息の根がとまるものですからにゃ。

高等教育という買い物と税金

国民金融公庫の調査によれば、高校入学から大学卒業までにかかる費用は一人平均1045万円、ガキのための教育費は年収の34%に達しているそうですにゃ。カネがかかりますにゃー、僕も目の前まっくらだよ、にゃっはっは。
住宅や生命保険も高価な買い物にゃんが、中等〜高等教育もでかい買い物にゃんなあ。


住宅購入に関する種々の税制における優遇措置にはふれたし、生命保険については、収入にかかわらず最大年間5万円の所得控除が受けられることになっていますにゃ。
生命保険も公共的機能がある金融商品といえるので、優遇措置があることに異存はにゃーですね。


では、高等教育についての税制における優遇措置って何があるのか?
16〜23歳の所得のないガキ(要するに高校生・大学生)を扶養している場合、1人につき年間10万円の所得控除。働きながら学校に通ういわゆる勤労学生の場合、勤労学生控除27万円が受けられますにゃ。
僕が思いつく限りで、たったこれだけ*1
これ、税額控除でなく所得控除ですにゃ。所得控除が10万ってことは、取られる税金は1万円くらい*2を勘弁してあげようということですにゃ。

教育が受益者負担

公共的性格、あるいは経済的波及効果の大きい支出に対して税制面で優遇しようという措置は適切だと思うんだけど、教育支出についての優遇措置は冷遇されすぎなんじゃにゃーの?
住宅、生命保険、中等〜高等教育の3つのうち、もっとも公共性が高く人権に直結し代替のきかにゃー支出って、教育になるとしか思えにゃーのだが。冷遇もいいとこにゃんな。
というか、冷遇ですませることのできる話ではにゃーんだな、これが。


高等教育予算の水準(国内総生産にしめる割合)は、OECD経済協力開発機構)加盟国全体の平均1.0%に対して、日本は0.5%にすぎず、加盟国中で最下位です。その一方で自民党政府は、“学費は、教育で利益を受ける学生本人が負担する”という「受益者負担」の考え方を教育にもちこみ、学費値上げをすすめてきました。1970年に1万2000円だった国立大学の授業料は今では53万5800円(標準額)で、これほど高騰した公共料金は他にありません。


「世界一高い学費」を軽減し、経済的理由で学業をあきらめる若者をなくすために


はあ? 受益者負担
教育の公共性をご否定ですにゃー。

教育への公的投資というwin-winゲーム

道路や上下水道などは個々人の生活基盤になると同時に、産業の基盤ともなりますよにゃ。こうしたものを「社会資本(Social Overhead Capital)」「インフラストラクチャー(infrastructure、略称・インフラ)」などといいますよにゃ。
「質の高い労働者」が大量にいれば、産業基盤として実に強力な武器となることは論じるまでもにゃーだろ。まあ、狭義の社会資本の考え方には文化的なものを含まないという話もあるけど、めんどいのでそのあたりの話はパス。

というよさげな論文をリンクしておくので、興味のある向きはどうぞ。この論文をざっと読んで、例えばドラッカーがいろいろいっていたのはソーシャルキャピタルのことなのではにゃーかと思ったりしましたにゃ。
とにかくここでは「教育は公共財だ」ということで話をすすめますにゃ。


教育という公共財への投資は、直接的に人的資本を充実させて個々人の福祉水準をあげながら、産業基盤も強化できるという、個人にとっても社会にとっても有益なwin-winゲームの典型への投資ということになりますにゃ。
これぞ公権力の担うべき投資だろ。ここに税金をぶちこむべきだろ。
憲法にうたわれる基本的人権を保障しつつ、経済合理性もある投資だからにゃ。


経済合理性については、http://d.hatena.ne.jp/muffdiving/20090304/1236177880なんかも参考になるよにゃ。大学の経済波及効果ってでかいよにゃー。

これは搾取ですね

とーこーろーがー
先ほどリンクした資料によると、国立大学の学費はここ30年でにゃんと約45倍!
45倍ですよ、45倍。30年で45倍になったものって他に何がある?


公的投資の対象であるべきもののツケが、家庭に負わされてきたのがニッポンの現状ですにゃ。


「世界一高い学費」が、高校生や学生、その家庭に重くのしかかっていることです。子育て世帯についての実態調査(国民生活金融公庫)によれば、高校入学から大学卒業までにかかる費用は一人平均1045万円、わが子のための教育費は年収の34%に達しています。


「世界一高い学費」を軽減し、経済的理由で学業をあきらめる若者をなくすために


公的投資するべきものを一方的に家庭に負わせてきた結果、現在の少子化だの格差だのということがでてきてるんでにゃーのか?
さらに、家庭が過分な教育費をなんとか負担しても、若い奴は使い捨てられて費用の回収すらままならにゃーこともざら。ええ、これは搾取ですね。


id:buyobuyo
そもそも公教育において一番のフリーライダーは企業(特に法人税納めてない連中)だと何度言えば。教育の「受益者負担」なんざ妄想。/ 日本の「質の高い労働者」幻想が完全に崩壊するまで気がつかないのかなあ。


http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/tikani_nemuru_M/20090310/1236631830

とあるとおりですにゃ。


国際人権規約(1966年に国連総会で採択)は「高校や大学の教育を段階的に無償にする」と定めており、欧米のほとんどの国では高校の学費はなく、大学も多くの国で学費を徴収していません。


国際人権規約(A規約=経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)の第13条は、高校と大学を段階的に無償化することを定めています。


 日本政府は、国際人権規約に加わりながらこの条項について「留保」したままです。無償化条項を留保している国は、条約加盟国157カ国中、日本とマダガスカルルワンダの3カ国だけです(2008年2月現在)。2001年には、国連・社会権規約委員会から「なぜ世界第2位の経済力の日本が認めないのか」「早く留保を撤回するように」という勧告が出されています。ところが政府は、回答期限の2006年が過ぎても、勧告への回答を放置したままです。かつて政府は「解除する方向に努力をし、またそういう責任がある」(1979年、園田直外務大臣)と明言していました。ただちに「留保」を撤回し、「世界一高い学費」の負担軽減をすすめる姿勢を明確にすべきです。


「世界一高い学費」を軽減し、経済的理由で学業をあきらめる若者をなくすために

税金の話にもどると

住宅・生命保険・高等教育、と庶民の買い物のうち、もっとも額が大きくなるこの3つで、高等教育というでかい買い物は税制面でもまるでフォローされてにゃーことが、何重にも欺瞞的であることがご理解いただけたでしょうかにゃー?
「教育には税金が投入されている」とかいう馬鹿反応がありそうだけどさ、生保とか金融にも税金がじゃぶじゃぶ投入されてるし、住宅についての「金持ち優遇」、つまり逆進性は我慢しようといってるんだぜ。
ガキの教育費は、住宅に手の届かないビンボー家庭にとっても極めて現実的な支出なんだにゃ。


せめて高校の無償化は当然に要求するとして*3、教育費がかかる限りはせめて所得控除くらいはしたらどうなんだろね? 当然、奨学金や教育ローンの支払についても、所得控除制度を設けていいのではにゃーのかな。
もし、高校や大学の無償化を勝ち取ったとしても、授業料以外にもいろいろとカネがかかるってのは明らかですにゃ。教育にはカネがかかるものだよにゃ。
だから、教育目的のカネを公的金融で貸して、その支払にあたって所得控除をするってのはよい制度だと思われますにゃ。


さて、それじゃ確定申告いってくる。

*1:ほかに何かあったらご指摘くださるとうれしい

*2:すごいおおざっぱに書くけど勘弁して

*3:民主党マニフェストにも公立高校無償化はうたわれている。順位は低いけど