軍の関与はなかった? よろしい、ならば洗脳カルトだね

この記事は沖縄戦終結とされた6月23日にあげるつもりだったんだけど、うっかりしていましたにゃ。まあ、今日25日は沖縄戦の組織的戦闘終了が発表された日ということで。


剥奪の結果としての子殺し - 地下生活者の手遊びで引用したとおり、進化心理学的にみて、加害者と被害者に血縁関係のある殺人というのは抑制されるのがジンルイの普遍的傾向ということになりますにゃ。そして、血縁関係における殺人があるときには、剥奪などの何らかの「圧力」がかかっているのだということも引用エントリで述べていますにゃ。
この観点から、沖縄戦集団自決を考えてみますにゃ(この記事は、以前に別の場所で発表したものを再構成したものです)。


集団自決のあった渡嘉敷村にある碑文(by曽野綾子)には以下のようにあるそうですにゃ。


豪雨の中を米軍の攻撃に追いつめられた島の住民たちは、(中略)敵の手に掛かるよりは自らの手で自決する道を選んだ。一家或いは、車座になって手榴弾を抜き或いは力ある父や兄が弱い母や妹の生命を断った。そこにあるのは愛であった


曽野綾子あたりにいわせれば「そこにあるのは愛であった」となるらしいんだけど、実際に現場はどうだったのか?
金城証言ビデオより引用

 天皇陛下万歳三唱が唱えられた。住民と防衛隊がそれぞれ持っている手榴弾を出した。何個あったかわからない。1個の手榴弾のまわりに家族と親戚が輪になった。二重三重に輪になって、これ1発で死のうねと言った。同時に死ぬ。混乱の中で鏡を見ながら髪をとかしている女性がいた。死ぬ直前にも女性はきれいにして死ぬと思った。手榴弾の栓を抜いて叩いて発火し、爆発して自決を遂げる。あっちでもこっちでも爆発音が聞こえた。子どもの泣き声も聞こえたが、手榴弾による死はきわめて少なかった。その後は混乱状態。パニックになった。命令もくそもない。


 死ぬという思いはあったが、どんなにして死ぬのかわからなかった。死の手法がわからない。大人の様子を見ていた。50歳ぐらいの男性が小さな木をへし折っていた。これでこのおじさんなにをするんだろう。凝視していた。木片が彼の手に握られるや否や、自分の妻子をめった打ちに殺した。衝撃的なこの世の生き地獄を目撃した。自分たちもあんなにして死ぬんだなと。役割を演じたのは父親。自分の妻と子を殺す。武器は持っていない。渡嘉敷ではありとあらゆるものが凶器だった


 私の父親は夜道を歩いているときはぐれて一緒にいない。2つ上の兄と、相談もしないで、なにしようという内容の会話もせず、一言も交わさないまま母の命を絶つ行動に移った。衝撃でした。一部始終覚えていません。ヒモを使ったかもしれません。ただ1つだけ強烈に覚えているのは、確実に頭部を叩けば死ぬという大きさの石で頭を叩くということをやった。母も泣いていたし、我々も衝撃的なことをやったことで、私は号泣した。ちょうど16歳と1ヶ月。そして、何分後かに母は息を引き取った。


 これはこの世の地獄としか言えない。あとは弟と妹に手をかけました。ちょうど小学校4年生に上がる妹と、4月から小学校に上がる弟。ですけどね、私、50年、60年経ってもどういうふうにして幼い弟と妹を死に至らしめたか、まったく記憶にない。恐ろしい母親の殺害。大きな悲劇の中に幼い者たちが包み込まれていた。どう殺したかわかっていない。


 父も死んだ。329名の住民が死んだ。下を流れる川が血の色に染まった。遺体が重ねあわされた。集団死は大人たちはわれ先に死ぬということはなかった。先に幼い子どもや老人を殺してから自分は最後に死ぬ。死ぬ手法を見せてくれた区長さんは、妻子を殺したあと自分の首を木の枝にヒモをかけて死のうとしたが、どうしても死ねないとウロウロしていたことを強烈に覚えている。


集団自決があったこと自体を否定する論調はほとんど聞かれにゃーし、その状況を知る上で信頼性の高い証言だと思いますにゃ。 これは集団自決などという生易しいものではなく、集団的な血縁殺人といっていいですにゃ。
で、こういう集団的な血縁殺人というのは進化心理学的にはおこりにくいはずであり、何らかの強制力が働いたとみるのが合理的なんだけど、どうも日本軍による強制はなかったという声がでかいみたいにゃんなあ。


よろしい!
愛国者諸君のためだ!
ここは1発、日本軍からの強制はなかったという前提で、進化心理学的見地からして発生しがたいと考えられる集団的な血縁殺人をなるべく納得のいく形で説明してみましょうにゃ。
僕に任せてくれ>愛国者諸君


犯罪とか異常心理の話は大好物なのだけれど、集団的な血縁殺人の事例はあまりにゃーなあ・・・・・
うーん、これでは愛国者諸君に向ける顔がにゃーぞ・・・・・・
お、あった、これがありましたああああ。
ずばり

ここから引用しますにゃ。


「我々は、みな死ななければならない。そうでなければ我々は、外界から破壊されてしまうだろう」
この日のサイレンは、いつもの予行演習ではなかったのだ。
このあと人民寺院の医師と看護婦が、強力なシアン化物の液体の入った大きな容器を運んできた。
飲みやすいように果物の香りがつけてある。看護婦がその液体を注射器に入れていった。


「まず子供たちが先だ。ただし子供たちに、死ぬのだということを悟らせてはいけない」
子供を持つ親たちが素直に前に進み出た。本物の儀式が始まったのだ。


生存者の証言によると、すべての信者が素直に集団自殺に従ったわけではないという。
抵抗しようとした者もいたのだ。

ある女性は、「死ぬのはいやだ」とハッキリ言ったが、彼女の言葉は、他の信者たちの非難やヤジの声にかき消されてしまった。またある者は、恐怖から半狂乱になり、その場から逃げようとしたが、周囲を固めるガードマンたちから羽交い絞めにされ、無理やり薬を飲まされた。
オデル・ローズという生還者が事故後に語ったことによると、「死んだ約900人のうち、200人ほどはのだという。


「子供たちは泣き叫び、それを見てヒステリー状態になった親たちもいたが、全体的にはそれほどの騒ぎはなかった。とくに老人たちは、自分の番が来るのを待ちながら、ただ目の前の出来事を黙って見つめていた。大半の人がそうだった」
「みんな互いに抱き合い、別れの言葉を言ったあと、次々と薬を飲んだ。それから5分もすると、みんな目玉が飛び出したようになって苦しみもがき、地面をかきむしりながら死んでいった。私は、どうやってここを抜け出すか、そればかり考えていた」


自殺を拒否して反抗的な態度に出た信者は銃殺されたが、脱走して難を逃れた者もいる。
当時ジョーンズタウンにいたのは約1100人だが、167人が生き残った。


ガイアナの監察医は、死んだ915人のうち300人以上は他殺である可能性が高いと判断した。逃げようとして銃で後ろから撃たれたと思われるものや、自分では手の届かない体の部位にシアン化物を注射されている遺体が多数あったのだ。
現場に最初に到着した軍の関係者は、テレビのインタビューで、
「逃げようとして後ろから撃たれたらしい遺体を数多く見た」とコメントしている。


のちに公表された人民寺院最期の瞬間のテープは、あまりの生々しさゆえに世間を震撼させた。

ジム: 「この自殺は敗北ではない!国家権力に対する抗議だ!革命的自殺なのだ!」
信者: (一斉に)「ダッド!(お父さん)」
信者: 「あなたと一緒に生きてこられたことに感謝します!」
信者: 「これは死じゃない!別世界への旅立ちなんだ!」


拡声器のようなひび割れた声。
阿鼻叫喚とバックに流れるオルガン音楽。
それが、いつしかすべて止み、シーンと静まりかえる。
もう誰も生きていないのがわかる。


金城証言を読んだときと同じようなどす黒い読後感が残りますにゃ。
さて
最悪のカルトと呼ばれる人民寺院事件において、死を強制されたもの、殺されたものも少なくはにゃーが、人民寺院の信者の多数は教祖とともに「自発的」に自分の子供を殺し、自分も死んだわけだにゃ。これほど規模が大きくはにゃーが、カルト宗教の集団自殺という例はいくつかあるにゃんね。
1993年 アメリカで起きたブランチダビディアン事件(86人)
1997年 アメリカで起きたヘブンズ・ゲート事件(39人)
2000年3月 ウガンダで起きた終末教団事件(約500人)など
共通するのは

  • 内部における情報統制
  • 「敵」イメージの極大化
  • 被害者意識
  • 超越的な存在への依存

あたりだろか?
オーム真理教あたりとも共通項が多々見いだせそうですにゃ。
これらの共通項はほとんどそのまま沖縄戦での「自発的」集団自決にあてはまるのではにゃーだろうか?


というわけで、喜びたまえ愛国者諸君! 軍の強制がなくとも集団自決はありえるという、君たちの望むロジックがここにある!!
ただし、この場合

  • 戦前の日本は人民寺院なみの洗脳カルトであった

ということになりますけどにゃ。


さて、ここで冒頭の碑文にもどりましょうにゃ


豪雨の中を米軍の攻撃に追いつめられた島の住民たちは、(中略)敵の手に掛かるよりは自らの手で自決する道を選んだ。一家或いは、車座になって手榴弾を抜き或いは力ある父や兄が弱い母や妹の生命を断った。そこにあるのは愛であった


おお、にゃんとも愛にあふれた文章ではにゃーか。まるでオウム真理教のポアの論理のように、人民寺院教祖ジム・ジョーンズの言葉のように僕の胸に響く。


沖縄戦集団自決において軍の強制がなかったとしたら、テンノーの名において行われた皇民化教育は最悪の洗脳カルト教育であった、ということになりましたにゃ。
この結論がお気に召さにゃー向きは、何らの強制力なくして数百人規模で集団自殺あるいは血縁者殺しをした例をもってきてほしいにゃ。僕も知りたい。


※記事を書くにあたり、特にid:Apemanid:D_Amonの過去ログにお世話になりましたにゃ。さんきゅ。