自己責任という呪術


http://d.hatena.ne.jp/y_arim/20081126/1227713875を読んで

自己責任は万能

  • 逃げるような男の子供を産むことに責任がある

のであれば、母子家庭に対する支援策はいっさい不要にゃんね。
同じ理路で、典型的な通り魔犯罪以外の犯罪被害者を救済する必要もにゃーな。犯罪をするような輩とつきあっていたのがワリイ。それどころか、交通事故も当然予見されるのに道路に出たほうが悪く、交通事故被害者の救済も必要ナシ。
b:id:metalbabbleというのは、ネット右翼というよりも、思考力と恥の感覚が不自由なヒトなんでにゃーのかな?

呪術としての自己責任

まあ、この手の「被害者にも責任がある」という発想でまず連想するのは、某仏教系教団の集会へ出た時の思い出ですにゃ。
僕が高校1年のとき、弟が某学会員の市会議員の店で万引きをし、警察沙汰を勘弁してもらったので僕が集会にでざるをえなくなったということがありましてにゃ。母子家庭で父親はおらんし母親は休む暇などないし、祖母は脳梗塞リハビリ中だったもんで、僕しかいけにゃーのよ。
で、集会にでて説法をきいたんだよにゃ。
「何か悪いことがあったら、それは前世の因縁だ」とかなんとか。

「じゃあ犯罪の被害者とか障害者って、前世の報いなんですかにゃー?*1
「そうです。そうした因縁を消すには、ナンミョーホーレンゲキョーと唱えるしかありません」
「そうなんですかにゃー。で、そのお題目をハングル読みしたら効果はにゃーのですか?」
「ナンミョーホーレンゲキョーでなければいけません。これが宇宙のリズムです」
「へ? なんで? 中国語読みもダメなのかにゃ? いや、そもそもサンスクリット語パーリ語で読んでもダメなの? 原典だよ?」
とか聞いてたら、二度と呼んでもらえませんでしたにゃ。イヤなガキでよかった。


と、閑話休題して話をもどすと、この輪廻と因縁の理屈を使うと、もう何でも自己責任になっちゃうんだよにゃ。これでは仏教における宗教的な境地である諦念とはなかなか結びつかにゃーよね、暴力的に抑圧的なだけで。


しばしば引用するレヴィ=ストロースのことばに

  • 呪術は全面的な因果性をその公準とする

というのがありますにゃ。


それにしても……、まあ。現し世で言われている「自己責任」の大半は、「運が悪いことの責任」なのではないか、と思えてならない今日この頃だ。

とリンク先でy_arimは言ってるけど、これらの「自己責任」の使い方って、もう呪術の領域に踏み込んでいるとではにゃーだろうかと僕は思う。

レイプされた女性にも責任があるという豚言説への反論資料

さて、ついでといってはなんだけど、「レイプされた女性にも責任はある」という豚言説について

  • 性犯罪−大人しそうな女性が狙われる 

どういう女性が性犯罪の被害者になりやすいかという調査がまとまった。それによると、「挑発的な服装の女性がいたから」という犯行動機はわずかだったという。警察庁科学警察研究所が全国の警察を通じて性犯罪の被害者と容疑者に聞いた初の調査の結果である。


容疑者545人に、その被害者を狙った理由を聞いたところ、「挑発的な服装」を挙げた者はわずかで、「おとなしそう」「警察に届けないと思った」の方がはるかに多かったという。「性犯罪は被害者が誘発したかのような偏見があるが、実態は違うことが裏付けられた」と担当者は話しているそうだ。


この調査は、科警研警察庁捜査一課の協力を得て、1997年10月から98年1月までに全国の警察署で扱った強姦(ごうかん)、強制わいせつ事件の被害者と、検挙された場合は容疑者を対象に実施したもの。


被害者703人のうち、原則として18歳以上で依頼が可能と警察官が判断した人に調査票を渡し、女性204人から回答を得たという(約54%が強姦事件)。
容疑者については、警察官が聞き取りをして記入した。14歳以上の545人分(同52%)を分析した。


なぜその被害者を襲ったののか、という容疑者に対する質問では、「前からつけ回していた」「相手が納得していると思った」など16の理由の中から容疑者が複数選択で選んだところ、「挑発的な服装をしていた」は全体で5%に過ぎず、「好みのタイプ」「だれでもよかった」は約1割だった。
最も多かった「理由」は罪種で違い、強姦事件では「警察に届け出ることはないと思った」(45%)。強制わいせつ事件では「おとなしそうにみえた(抵抗されないと思った)」(48%)が多かったという。


一方、被害者に事件当時の状況を聞くと、ナイフなどで脅された人は1割で、「無理やり体を押さえつけられた」「殺すぞ、などと言葉で脅された」人が多かったそうだ。被害者の7―8割が強い恐怖やショックを感じ、特に強姦事件では7割が「言うことを聞かないと殺されるかもしれない」と思ったと答えたという。


http://homepage1.nifty.com/midnightsapporo/mas/masp/hanzai/hanp/han02/hanzai.html


平成18年犯罪白書にある上記グラフを見てほしいのだけれど、性犯罪被害者は圧倒的に年少者が多いにゃ。これは、性犯罪者の被害者を選定する基準である「「警察に届け出ることはないと思った」(45%)。強制わいせつ事件では「おとなしそうにみえた(抵抗されないと思った)」(48%)が多かった」ことに見事に対応していると考えられますにゃ。
この資料もよくまとまっていますにゃ。PDFなので注意。
http://www.crdc.gifu-u.ac.jp/cerd/scs/resume2k7/scs20070706sugimura.pdf
上記より引用


性暴力にまつわる「神話」(「レイプ神話」)と「事実」


a. 神話「変な人や不審者に注意すればいい」→事実は「加害者はふつうの人
問題点:たとえば路上生活者に極端な嫌悪感、警戒心をいだかせるだけで、予防につながらない。


b.神話「暗い夜道や一人歩きに注意すればいい」→事実は「加害現場は屋内がおおい
問題点:女性の行動を制限する。弱者だと実感させるだけで、予防につながりにくい


c. 神話「若い、きれい、服装が派手など、特定のタイプだけが被害にあう」→事実「より弱そうな人がねらわれる
問題点:「短いスカートをはいていた」「普段から派手」など被害者の落ち度とされる


d. 神話「被害者が抵抗すれば、被害はさけられる」→事実は「抵抗すらできないほど恐ろしい
問題点:抵抗しなかった被害者の落度とみなされる


e.神話「性被害をうけたら誰かに話すはず」→事実「警察の通報率は10 数%以下
問題点:「かえって非難される」「信じてもらえない」などが言わない理由としてあげられている


f.神話「女性は強姦されたがっている」→事実「空想することはあっても、現実に望んではいない。コントロールの主体が異なる」


この手の一連の強姦神話というのは、売春が悪とされてきた本当の理由と非モテ童貞の真の敵 - 地下生活者の手遊びで述べた、♀のセックスのコントロールの一環でしょうにゃ。呪術的に♀の性をコントロールしようしている。

国籍法改正という文脈に接続すると

もともとの国籍法改正の文脈にもどすと、経済的な偏在、性の非対称、共同体への他者の侵入、などなど、呪術的心性を刺激する話題のオンパレードであり、これらをいっきに解決するために、【自己責任という呪術】を発動させちゃっているのでにゃーのかな?

*1:ホントは10代のころからにゃーにゃー言っていたわけではにゃーが