妖怪、人間あまり無理しちゃいかんと語る
昼飯をときどき食べに行く職場近くのラーメン屋に、水木しげるの「ヒットラー」がありましたにゃ。30年以上前に「漫画サンデー」で連載したものが復刊したものらしい。
- 作者: 水木しげる
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2003/02/01
- メディア: 単行本
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淡々となぞると水木節になってしまうのが作家性というものだろうかにゃ?
まあ、まだ手に入るようなので興味のある向きはどうぞ。水木ファンは楽しめると思うし、水木のデフォルメされた人物造形はある種の本質を浮かび上がらせているようにも感じられましたにゃ。
作品中ではホロコーストにはほとんど触れられてはいませんにゃ。
で、この作品の水木の手による「あとがき」がすっとぼけていて気に入ったので引用。この後書きは復刊時に書かれていますにゃ。
あとがき「ヒットラーさん」
ヒットラーさんは、私が十八才位の時から大いに活躍されたので、よく覚えている。
なにしろ彼は演説がうまかったから、大ていのドイツ人は、酒を一パイのまされた気分になったのだろう。
なにしろ、出現してドイツを率いて戦争して勝ったんだから、心酔せざるを得ない。
中略
当時十八才位だった私はヒットラーに酔っていた。
ヒットラーのように「鼻ひげ」をはやそうと思ったが、十八才では無理だった。しかし東條首相は当時ヒゲをはやしていて、日本のヒットラーみたいになろうとしたようだが、運悪く戦争は敗けた。いずれにしても当時のヒットラーさんは格好が良かったネ。
やたら右手を上げては戦争に勝っていたが、無理な戦争だったとみえて最後は自決だった。人間あまり無理をしちゃあいかんネ。
どうよ、この脱力具合。
水木のようなメンタリティのニンゲンが「いずれにしても当時のヒットラーさんは格好が良かったネ。」といっているのは意味が重いのではにゃーかな。
まあ、本人が半ば妖怪化しているだけあって、人外の視線でニンゲンを見ているような気もするのだけれど。