子どもを守らないものは大人とはいわない(追記アリ


先日、島根県の公立高校で「学費滞納が生じた生徒には卒業証書を渡さない」という告知がなされたという件について、県教委が高校の判断を問題としたという報道がされたことに関連して、国籍法改正関連で醜態をさらしたかのapjセンセイがまたもおかしなことをいっている*1という話ですにゃー。
以下は関連エントリ。

高校生は児童である

まず、リンク先をみてくださいにゃ。外務省の作ったものですにゃ。

成人とは満20歳以上のものをいう、というのは当然にゃんね。法律主体としては原則20歳以上ですからにゃ。
労働基準法自衛官の任意採用については、18歳という縛りがありますにゃ。とはいえ、これらは高校を卒業しているか否かということが運用の事実上の基準となっていますよにゃ。高校3年生は、3月いっぱいまでは満18歳以上に達しない者もいるわけで、法の運用上は高校3年生は18歳未満とみなすのが適当でしょうにゃ。

日本も批准している「児童の権利に関する条約」では、児童とは18歳未満のものであると定義されていますにゃ。18歳をもって成人と定義する国もけっこうあるので、18で線引きするのは現実的なところでしょうにゃー。


というわけで、まず確認。

  • 教育現場において、高校生を児童とみなす合理的な理由がある

児童を搾取するのは誰か?

例えば、労働基準法には「賃金支払いの五原則」というのがあり、その中には「直接支払いの原則」、つまり、労働者に直接賃金を支払わなくてはならない、という規定がありますにゃ。この規定は労働基準法の運用上も重視されているものにゃんね。
で、なんでこんな規定があるのか?
自分のガキが働いている事業所から、DQN親がガキの給料をもってっちゃうということが戦前は非常によく見られたらしいにゃ*2。酒だの博打だのにつっこんでたんだろね*3


とまあ、こんな規定を持ち出さずとも、労働基準法における児童労働の禁止というのは、周囲の大人、多くの場合は親からガキを保護するためにあると考えて間違いにゃーところなのよ。
児童売春、近親姦児童ポルノなどの性的搾取にしても、加害者は圧倒的に身近な大人、特に親が多いよにゃ。人身売買でも被害者はガキ、加害者は親であることが多い。児童虐待についてはいうまでもにゃーよな。


もちろん、ガキを保護育成する責任がまず親にあることはアタリマエ。
しかし
ガキを搾取・虐待する加害者として、もっとも多いのが親であるという事実から目を背けるわけにはいかにゃー。

ガキを親から守る義務

ガキを搾取・虐待するのが往々にして親であるからこそ、先にリンクした児童の権利に関する条約では以下のような条文があるのだにゃ。


第19条

  • 1 締約国は、児童が父母、法定保護者又は児童を監護する他の者による監護を受けている間において、あらゆる形態の身体的若しくは精神的な暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的虐待を含む。)からその児童を保護するためすべての適当な立法上、行政上、社会上及び教育上の措置をとる。
  • 2 1の保護措置には、適当な場合には、児童及び児童を監護する者のために必要な援助を与える社会的計画の作成その他の形態による防止のための効果的な手続並びに1に定める児童の不当な取扱いの事件の発見、報告、付託、調査、処置及び事後措置並びに適当な場合には司法の関与に関する効果的な手続を含むものとする。


つまり、親からガキを守る義務を公権力が負っているということになるんだよ。
自分のガキを高校にいれておいて、授業料を納めにゃーDQN親のしていることは、一種の虐待と考えてよいのではにゃーだろうか。ブクマコメなどにもそういう指摘はありますにゃ。なんせ、生徒は民法上の契約主体ではにゃーし、労働も制限されていますにゃ。だいたい、高校ではバイト禁止の所が多いし。
つまり、DQN親の身勝手からガキを守る責務が、公的教育機関にはあるということになるんでにゃーのか?


また、ニセ科学批判というのは、バカ親からガキを守るためのツールのひとつと僕は考えていますにゃ。

ガキに教育を受けさせる義務

親を選んで生まれてくることはできにゃー。本当にどうしようもにゃー親は現実にいくらでもいる。だから、親がDQNだったら、社会でガキを守ろうよ、という話になっているんだにゃ。もちろん、ガキも自分で努力すべきだよね。だからこそ教育をしっかり受けさせる必要があるわけだにゃ。自立と自律のためには教育は必要不可欠ですからにゃ。
だからこそ、児童の権利条約にはこういう条文もあるのだにゃ。


第28条

1 締約国は、教育についての児童の権利を認めるものとし、この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するため、特に、

  • (a) 初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする。
  • (b)種々の形態の中等教育(一般教育及び職業教育を含む。)の発展を奨励し、すべての児童に対し、これらの中等教育が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとし、例えば、無償教育の導入、必要な場合における財政的援助の提供のような適当な措置をとる。
  • (c) すべての適当な方法により、能力に応じ、すべての者に対して高等教育を利用する機会が与えられるものとする。
  • (d) すべての児童に対し、教育及び職業に関する情報及び指導が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとする。
  • (e) 定期的な登校及び中途退学率の減少を奨励するための措置をとる。


2 締約国は、学校の規律が児童の人間の尊厳に適合する方法で及びこの条約に従って運用されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。


と、この28条1-(b)を見るだけで、高校側のやっていることはそうとうまずいということになるだろにゃ。そして、ガキの福祉における教育の重要さについては、教育基本法においても同様の理念が謳われておりますにゃ。
公的教育機関は、児童の権利条約にも教育基本法にも従わなくてはならにゃー。

大人、社会、教育


 「教育的配慮があれば規範は無視でよい」「学生は護られるべきだから契約を破っても護られて当然」といった倫理観を持った学生を育ててしまうことの方が、致命的にまずいと思う。


http://www.cml-office.org/archive/1235922929284.html


まるで話にならにゃータワゴトだにゃ。
致命的にまずいのは、大人がガキを守らないということなんだよ。


ガキに対して大人がすべきこととは何か?
全力でガキを守ってあげた上で、こう言うことだ。

  • 「おまえも子どもを守ることのできる大人になれ」


大人がガキを守り、そのガキが大人になったらさらにガキを守る。
ひとりひとりでできることには限界があるから、みんな(=社会)でガキを守る。
規範がどうこういうのなら、これ以上に大切な規範はニンゲンの社会にはありはしにゃー。
これが通じにゃーのはニンゲンの社会ではなく、これがわからんのは大人ではにゃー。
右だの左だの、保守だの革新だのという瑣末な話でもにゃー。
何のために社会があり、教育があるのか、大人とは何なのか、僕はそういう話をしている。

追記でブクマコメに応答 14:30ごろ

id:nanahusi
良い社会のためにはやはり法律を破ってはいけない。いや子どもの権利を最重要視することこそ良い社会に必要だ。と、互いの根底の価値観が違ってるおかげで議論が微妙に噛み合ってないように見える

学校現場においては教育基本法がベースになるべきなのは明らかであり、法的に考えてもapjの発言は妄言ですにゃ。
http://www.cml-office.org/archive/1236366816289.htmlのコメ欄
あるいは
http://d.hatena.ne.jp/buyobuyo/20090307/p1
あたりを参照のこと。

id:welldefined
しかし相変わらず天下ってきた条約がお好きな方々だ。土民はコトバの定義にも従順だから面白い。クリープが無いとコーヒーとは言わないとか何とか。

こういう虫が涌いてくることは予想していましたにゃ。
「大人はガキを守るもの」というのが、天下りだと抜かすのはマジに虫なみ。
山上憶良を引用したブクマコメもあったが、元来、日本人はガキを大切にしてきたということに誇りを持ちえないのであれば、それこそ脳が完全に豚資本主義に植民地化されているのではにゃーのか?
日本がガキを適正に保護することにかけて、西欧のさきをいっていたことは、例えば教育刑で犯罪抑止した世界で最初の人物は鬼の平蔵だった - 地下生活者の手遊びでも述べたことですにゃ。あるいは、アジアにおいても人権概念が普遍性をもつことについてはアマルティア・センも積極的に発言していますにゃ。
児童の権利条約に関しても、「これこそ私たち日本人が昔から持ち続けた考えなのです」と受け入れるのが、愛国的な日本人というものだにゃ。
もちろん、
キリスト教倫理に立とうが、自由民主主義の理念に立とうが、大人はガキを守るものだというのは成りたつ。

id:nekora
「僕の考えた理想社会」建設の方法として学費踏み倒しは妥当なのだろうかってのと、さしあたりどう回収するのかと。

学費踏み倒しが妥当だと誰かいったかい?
学費を踏み倒しているのはバカ親だということが、この記事を読んですらわかんにゃーのかね? 回収については触れてはいにゃーが、それはまた別の話。バカ親からきっちり取り立てる何らかの方法を実行することに異論はにゃーぜ。もちろん、苦しくて払えにゃー親もたくさんいるだろうから、そこは考慮すべきなのは言うまでもにゃーことだが。
だいたい、「僕の考えた理想社会」のことなんて言ってにゃーんだが。僕がいっているのは最低ラインの話だぜ。
「大人はガキを守るべき」に何か文句があるのか?

*1:前回も「子どもを守る」という国籍法改正の趣旨をなかなか理解しようとしなかった。つまり、僕の知る限りでは今回で2度目だ

*2:ニョーボの給料をDQN夫が持っていくということも多かったらしいが

*3:昔に出生率が高かったのは、ガキが労働力と見込めたからですにゃ。ガキをつくることに短期的・中長期的な経済的合理性があったのですにゃ。つまり、経済的利己主義のゆえに出生率が高かったという側面は確実にあるはず