「ヤクザの3割は在日」というお笑い都市伝説


前回エントリのコメント欄に、例によって有象無象が湧いてきましたにゃ。
朝鮮高校無償化や外国人労働者問題など、外国人差別がらみのことを書くと、きまって湧いてくる連中というのがいますにゃー。
で、
朝鮮高校無償化問題で、粘着を続ける馬鹿がひとりいるんだけど、それがコメント欄でこんなことをおっしゃってましてにゃ。


在日朝鮮人の日本人口に対する割合は0.3%、それで、ヤクザの30%は在日朝鮮人


http://d.hatena.ne.jp/tikani_nemuru_M/20110218/1297965006#c1298473057

そのソースを出せといったら、出してきたのは*1

「俺はどっかの馬鹿とちがって、ソースのないことは言わないの。」と彼は仰せですにゃ。


ぐぐってみると、在日にヤクザが異常に多いとかいう差別主義丸出しの豚言論の根拠として、この「ソース」とやらは流通しているようにゃんな。
どうしようもねえ。
ちゃっちゃっとつぶしておきますにゃ。

ありえねえだろ1

以上のページから【新受刑者中暴力団加入者の国籍】に関するデータをひとつの表にしますにゃ。

年度 総数 日本 韓国・朝鮮 中国 アメリカ合衆国 その他 韓国・朝鮮国籍の比率
2009 2960 2902 53 1 - 4 1.80%
2008 3265 3191 63 5 2 4 1.93%
2007 3665 3589 68 3 - 5 1.86%


というわけで、直近3年間の統計資料を出したけれども、過去においてもだいたい同じような傾向のようですにゃ。
すなわち、

  • 【新受刑者中暴力団加入者の国籍】における韓国・朝鮮籍の比率は2%にも満たない


「ヤクザの3割が在日」という主張は差別主義者の脳内夢想というのがこれだけでもわかりますにゃ。

ありえねえだろ2

から引用しますにゃ。


在日コリアン暴力団に占める割合を3割前後と仮定した場合、在日コリアン暴力団員は約2万人〜2万5千人程と推測される。
中略
仮に在日コリアン暴力団関係者の人数が2万5千人だったら、在日コリアンの成人男性の9・6人にひとりは暴力団って事になる※含高校生(笑)!
中略
感覚的には「日本人女性の5人に1人はゲイシャ」とか「日本のアマチュアスポーツマンの10人に一人はスモウレスラー」って言われているような感じでしょうか?


リンク先前半はそのまま引用したけど、後半については結論だけ述べると

  • ヤクザの3割は在日、という前提に従えば
  • 在日コリアン暴力団員も多いが、そうではない一般市民が犯罪を犯す確率はほぼ0%
  • 一般の在日コリアンは日本人よりも遥かに善人であるって事になる


ということになってどう考えても滅茶苦茶。
リンク先は数字をあげながら丁寧に論証しているので興味のある向きはご確認のほどを。

ありえねえだろ3

そもそも概念がおかしい。
暴力団」というのは暴対法により法的に規定されているものであり、「ありえねえだろ1」であげた統計における「暴力団加入者」もそれに基づくと考えられますにゃ。

指定暴力団22団体中、関東に2つ東京に4つ、千葉に1つ*2あることをのぞけば西日本に集中していますにゃー。
しかし
ヤクザというのは博徒テキヤも含む概念であり、ちょっと広めるとチンピラや愚連隊なんかも入れられちゃいますにゃ。さらに広義には反社会的な組織を指したりしますよにゃー。


一般的な「ヤクザ」の用法にしたがって博徒テキヤをヤクザにいれたとすると、東海、東北や北海道にもヤクザはいても指定暴力団は原則的にはいにゃーことになる。


で、以前にも書いているとおり、僕の母親と何十年も内縁関係にあるのは静岡の元ヤクザの幹部でしてにゃ。僕の養父みたいなもんだ。
直接聞いたところによると、
「このあたりの極道に朝鮮は、まあいないわけじゃない、という程度」
といっておりましたにゃー。


つまり、「ヤクザ」という曖昧な概念のなかで「同和が6割、在日が3割」とかいいだしちゃうことそのものがもうすでに情報弱者。東海、関東、東北、北海道における「ヤクザ」に「同和や在日」がそんなにいるわけにゃーだろう。

ありえねえだろ4

ソースとされる発言をした菅沼光弘氏は別に暴力団対策の専門家ではにゃーようだ(ウィキペディアの経歴を参照しただけだけど)。
で、専門家でもにゃーお方が、山口組No.2の発言としてダダ漏れにしたのが「ヤクザの6割は同和、3割は在日」発言にゃんね。つまり、山口組No.2の発言としてすら一次情報ではにゃー。僕が検索した限りでは、山口組No.2に確認したというソースすらにゃーわけね。


あまりのことだから繰り返すにゃー

  • 専門家でもないおっさんの伝聞で、「ヤクザの親分さんがこういってました」

これが、「ヤクザの6割は同和、3割は在日」の唯一の【ソース】ですわー。
しかも、数字をもって検証すれば、もうボロボロもいいところ。
こんな【ソース】(笑)をもってくる連中は情報弱者で他人に踊らされるだけの差別主義者と断じていいのではにゃーの?

「6割」の部分について

「ヤクザの6割は同和、3割は在日」というダークファンタジー発言の「3割は在日」については各種統計をもってはっきりと否定できるけれど、「6割は同和」という悪質な発言については僕の検索能力でははっきり否定する材料は見つけられませんでしたにゃ。
もちろん、被差別部落の地域的偏在性とか割合とかから考慮すると、相当に馬鹿馬鹿しい発言であることはわかるし、「3割は在日」部分がくだらん戯言である以上、「同和」の部分もとりあえず却下しておいたほうがいいのではにゃーだろうか。

情報弱者の伝言ゲーム

さて、今回いろいろと検索していてオモチロかったのが、「ヤクザの6割は同和、3割は在日」という与太発言が伝言ゲームとして伝わっているあたり。
疑似科学関連で、願望だけが先走る伝言ゲームというのをいくつも見ているけど、これも十分に笑わせてくれる伝言ゲームにゃんなあ。
まず

  • ヤクザの6割は同和、4割は在日

スゲエだろ? ぐぐってみると結構見つかりますにゃー。
同和でない日本人にヤクザはいにゃーんだってさ。

  • 風俗嬢の6割は同和、3割は在日

これを見たときには腹筋が引きつったにゃー。ググるとホントにあるよー。


「ヤクザの親分さんに聞きました」という荒唐無稽な伝聞情報で始まる伝言ゲームの帰結としてはこんなもんかにゃ?
民族差別・身分差別と女性差別が見事に連携していく事例の典型でもありますにゃー。

*1:精確には本人が出してきたものではないが、本人がこのソースだと承認している

*2:この部分 2/24 19:30ごろ訂正