消費税増税=意地汚い豚の鳴き声


いくつかの僕の信頼するブログで話題になっていた、神野直彦著「財政のしくみがわかる本」岩波ジュニア新書、読了。

財政のしくみがわかる本 (岩波ジュニア新書)

財政のしくみがわかる本 (岩波ジュニア新書)

財政などというまったくわかんにゃー分野だから、ジュニア新書くらいで僕にはちょうどよかったにゃー。

カネを儲けるのは財政ではない

  • 財政とは社会の構成員が誰も排除されない経済である⇒民主主義が前提
  • 市場社会における政府の経済活動を財政という⇒市場社会が前提

というわけで、社会主義には財政というものはにゃーらしい。びっくり。
市場社会には企業と家計と政府というプレイヤーがありますにゃ。企業は生産とカネ儲けを担当、家計は消費と再生産を担当、政府は財政を担当するということのようですにゃ。そして、財政とはカネ儲けではにゃーのだと。


市場社会というと、とにかくカネ儲けが優先される社会のように僕たちは思わされているけれど、例えば家計はカネ儲けを担当するプレイヤーではにゃーですね。家族のためにメシを作ってカネをとるわけではにゃーわけだ。メシを喰うというのは食品の消費であり、まぎれもなく経済活動だけれども、そこでは対価が要求されるわけではなく、カネ儲けは無関係ですにゃ。ちゅうか、家の中でカネ儲けをされたら家庭生活なんて成り立たにゃーですね。
同様に財政というものもカネ儲けをしてはならにゃーそうだ。市場社会にはカネ儲けをしては成り立たにゃー分野というものがあり、家計の外でカネ儲けしてはならにゃー分野を受け持つのが財政ということになるらしいですにゃー。


だから、一見すると逆説的に見えるけれど、社会主義国家においては財政というものは存在しにゃーのだそうです。国家が生産活動をして利潤も国家に属するとなると、国家がカネ儲けをするということになり、それでは財政があるということにはならにゃーんだと。ファシズム国家にも財政はなさそうだにゃ。


例えば夕張市の破綻の大きな原因として、三セクでホテル経営・スキー場経営を行い、その経営が失敗したことがあるとのことだけど、これはそもそも自治体の財政がカネ儲けに手を出したこと自体がダメダメだったということになりますにゃ。
いま、日本の多くの自治体でおこっていることというのは、カネ儲けに手を出して失敗し、そのツケをなんとかしようとして医療や教育、福祉などという、これも財政の担当すべき、つまりカネ儲けをしてはならにゃー分野で、独立採算という名のカネ儲けを求めるという気の狂ったことなわけですにゃ。


つまり、自治体や政府がカネ儲けに走るということは、いわば家庭内のサービスに対価を求めるのと同じで市場社会の基盤を破壊する行為であるといえるのでしょうにゃー。

ニーズとウォンツ

ニンゲンが生きていくうえで必要不可欠なサービスをニーズ(needs)、生存に不可欠なものをこえる欲望をウォンツ(wants)として、ウォンツの充足においてはいくらでも企業がカネ儲けをしてよいけれど、ニーズの充足には対価を求めずに家計や財政が対応していくということですにゃ。


市場と言うものはウォンツを満たすのは得意中の得意ですよにゃ。
よく「客のニーズを満たすのがよい企業」みたいに言われるけど、これはどちらかというと「客のウォンツを満たせ」がふさわしく、さらに言えば「客のウォンツを創りだせ」るのが儲けられる企業といえるでしょうにゃ。
ところが、生きるうえでのニーズを万人に分配することは企業にはできませんにゃ。腹が減って泣いている赤ん坊がいても、対価がなければ企業が赤ん坊にミルクを飲ませることはにゃーわけだ。そして、赤ん坊本人に購買力はにゃー。


そして、このニーズの典型として、医療・教育・福祉があるわけですにゃ。つまり、医療・教育・福祉などのニーズを満たすために存在する経済活動において、カネ儲けを求めること自体がそもそもおかしいということになりますにゃ。


で、以下は本を読みながら考えたことなんだけど、この本でいうニーズというのはパターナリズムにもとづいて分配されるべき財とサービスといえるのではにゃーだろうか?
植民地主義フェミニズムあたりの関連でパターナリズムというのは甚だ評判がワリイし、それには理由があるのもわかるけれど、「パターナリズムいくない」ではニーズの分配ができなくなるのではにゃーかな。また、医療や教育の現場においては、パターナリズムを認めてしまったほうがサービスを分配する効率もよくなるんですよにゃー。このあたりに関してはこういうネタも書いたにゃー。
また、ニーズとウォンツについては、情報の非対称性もデカイ要素に思えますにゃー。医療と情報の非対称性についてはここなどを参照

例によって線引き問題

もちろん、ニーズとウォンツの境界線というものは明確ではにゃーですね。社会状況によっても考え方によってもその線引きは変わりえるでしょうにゃ。
ただし、
各人に必要なニーズを対価ナシに配るために財政というものがあること、政府の経済活動はそのために存在すること、そうした分野でカネ儲けをしてはならにゃーということはおさえておかなければならにゃーでしょう。

税制の問題


まず、眼からウロコだったのは、なぜいわゆる不労所得に高い税率がかけられるのかという話でしたにゃ。僕はてっきり、なんらかの価値判断が税率に影響しているのではにゃーかと思ってたんだよね。
ところがそうではにゃーらしい。
財産を運用して利益を100万円出した場合と、労働して100万円稼いだ場合では、単純に担税力が違うからという説明でしたにゃ。担税力に応じて課税しているだけなんだそうですにゃ、にゃるほど。


累進課税だってそうだよにゃ。儲けているヒトのほうが担税力が高いのは当然のことなので税率が高くなるというだけのことですにゃ。


あと、これは書いていなかったことだけど、担税力の高いヒト、つまり儲けているヒトというのは、それだけ社会から多くを得ているヒトなのではにゃーかと僕は思いますにゃ。儲けているヒトというのは、もちろん財を社会に生み出しているというのもあるけれど、より多くのものも受け取っているんではにゃーかな?
ベストセラー作家の本が売れるのは、国民が字を読めるからだよにゃ。初等教育が機能不全に陥ったら、作家も出版社もカネ儲けなんてできなくなるもんにゃ。金持ちほど社会インフラの恩恵にあずかっているともいえるのだから、金持ちがより多くの税を担うのもアタリマエだと考えるけどにゃー。
なんでまた今の日本の社会って、金持ち様が財を生み出して貧乏人がそこにぶら下がっているような一面的な言説が幅をきかせているんだろね?

消費税増税の狂気


さて、大新聞様もテレビ様も、財政再建=消費税増税、となってしまっているけれど、それがいかに気が狂った話かもこの本を読んでよーくわかったにゃ。


これは僕も知っていたことだけれど、日本の所得税の累進制が高いというよくある話がいかにウソまみれかはきっちり書いてありますにゃ。
株の売却益や配当金、利子などの、本来は担税力が特に高いうえに社会インフラの恩恵を受けまくった利益は分離課税で累進性がほとんどにゃーんだよね。キャピタルゲイン(株の差額での儲け)なんて、税率は取引額の1%ですよ、1%!(追記と訂正 12:45ごろ  キャピタルゲインの税率は現在10%だそうです。コメ欄で指摘がありました。ただし、世界でもまれな低税率という文の趣旨に変更の必要はないようです) 他の国の多くは総合課税だから(ここを参照)、これは世界でもまれな低税率にゃんな。日本で1番税金を払ってにゃーのは、株や利子で食っている大金持ち様にゃんな(げらげら


いわゆる先進諸国で付加価値税(日本では消費税)を国税として導入してにゃーのはメリケンだけですにゃ。あの国は貧乏人には税負担を求めにゃーんだよね。そのかわりに、保障もしにゃーわけだ。貧乏人からは税もとらないかわりに、自分の力で生きろ、と。ボランティアを尊ぶ国民性もあるしにゃ。これが小さな政府にゃんね。
欧州諸国では、高い所得税率のうえに付加価値税を徴収し、ニーズを満たそうとしているわけだにゃ。大きな政府ね。


で、我が日本は利子や株で食える大金持ち様を世界でもっとも甘やかし、付加価値税(消費税)をとって、貧乏人は自己責任で生きろとおっしゃる!

大学教育と消費税

これは本に書いてなかったんだけど、ちょっと思いついたので各国の大学学費と付加価値税の税率を調べてみましたにゃ。参考にした資料は、「教育指標の国際比較」(平成21年版):文部科学省諸外国の付加価値税(PDF)ですにゃ。文科省国会図書館の資料ね。

国名 年度 付加価値税 大学初年度納付金
日本 2007 5% 国立817,800円 私立1,298,726円
2005 州立総合大689,000円 私立総合2,904,000円
2007 15% 国立大703,000円
2006 19.6% 国立大学24,000円
2007 19% 州立大(ボン大学)106,400円


いくつか注意点を書いておくと


日本のGNP比における公的な高等教育への支出が33.7%とメリケン(34.7%)よりも低く、OECD諸国内ではケツから2番目の有り様ですにゃ(ビリは韓国24.3%)。ヨーロッパでは大学教育がアタリマエのようにタダのところもけっこうありますにゃー。


で、付加価値税をとっている国としては、日本の大学の学費の高さについては「圧倒的じゃないか、わが軍は」。
イギリスについては注意書きをしたとおり、貧乏人は付加価値税をあまり払わずに済むうえに、3分の1以上は学費を払わなくていいんだにゃ。日本では年収400万以下の家庭はすべて学費免除にした東大でも学費免除者は4.6%で、他の国立大はみなそれ以下にゃんな。
つまり

  • 付加価値税をとるOECD諸国では、貧乏人が大学にいくのにカネはかからない(ただし、日本と韓国を除く(韓国はどうやら日本よりヒデエ))

ガキの貧困率はさらにあがる

付加価値税をとるということと、ニーズの典型のひとつである高等教育との関係をみてみましたにゃ。日本が金持ちを甘やかし、貧乏人から取り立てて、階層をあがる主要な手段である高等教育についても貧乏人お断りにしているという、世界でも稀な厚顔無恥社会になっているということははっきりしたのではにゃーだろうか?


わたくしごとになるけど、僕の母親は1941年生まれですにゃ。本人の弁によると、中1のときの学力検査で県で3番だったそうな。でも中卒にゃんな。昔の日本のカネがにゃー家で、とくに♀だったらそういう例はごろごろしていましたにゃ。それでだいぶぐれた後にサヨク運動に目覚めたらしいけどにゃ。で、サヨク運動の汚さに幻滅した、と(げらげら


今の日本は、政府による再分配後にガキの貧困率があがるという、まさに国辱モノの社会ですにゃ。で、高校無償化もこども手当もバラマキだそうで、消費税率をあげるんだってよー。ぶわっはっはっはー。
どうやら今の日本では、財政の存在理由である「対価を要求せずにニーズを満たす」という行為はバラマキということになるらしいにゃ。


このまま消費税をあげたりしたら、確実なことは、再分配後のガキの貧困率がさらにあがり、どんなに優秀であっても高等教育をうける機会すら与えられにゃーガキが大量にでてくるってことですにゃ。そして階層が固定されるわけにゃんな。
僕のガキが仮に優秀だったとしたら、僕の母親と同じめにあうかもしれにゃー。全力で回避はしたいけどね。
機会均等って笑えないジョークにゃんな。

ついでに法人税

法人税減税のために消費税をあげるという議論もあるみたいにゃんが、もちろんこれもオオウソね。詳しくは税経新人会全国協議会 - 法人実効税率のごまかしと法人所得課税 - 1
日本の法人税実効税率は30%ほどだし、仮に法人税を40%と計算したとしても社会保障負担を併せて考えると、英米よりは負担率が高いが独仏よりは負担率が低いんだにゃ。
法人税を減税したら、内部留保にも回るだろうけれど、配当にも回るだろうにゃ。
ここでも金持ちを甘やかすわけだ。


別に僕はこの問題の専門家でもなんでもにゃーけどな、

とかいうのは性質の悪いペテンだということはわかるにゃ。そして、大新聞様とテレビ様はペテンを垂れ流しなんだにゃー。金持ち様を甘やかしまくったあげくの果てに、日本の経済は今の有り様なのににゃー。

財政赤字

「しかし、財政赤字が、ギリシャの例が・・・」
という話があるかもしれにゃーですね。
ギリシャの債務というのは対外債務ですにゃ。ギリシャが公務員をやたら優遇していたというのが事実だとして、それは外国から借金して公務員に配っていたということにゃんな。
しかし日本の場合は、債権者は日本国民ですからにゃー。神野によれば、「稼ぎ手であるお父さんが、お母さんに借金しているのと同じで、家計が破綻することはない」ということらしいけどにゃー。まあ、このあたりには異論もあるらしいけどにゃ。
しかし、対外債務と国内での債務がまるで違うということはガチみたいね。極端な話、国債保有税でもかければ国債の借金なんてすぐになくなるわけでしてにゃ。

仮に消費税をあげるとして

あと、消費税率を上げる場合、食品などの非課税という話もあるんだけど、そういうことをすると役人の跋扈する余地を残しますよにゃ。かといって逆進性はまずい。


複数税率の採用の是非を議論するに当たっては、EU において税率構造の簡素化の努力が重ねられてきたことや、IMF が、日本の消費税が単一税率のもと非課税範囲も狭いことに関連し「もっとも良くデザインされた付加価値税制をもっている」と評していることも、重く受け止める必要があろう。その上で逆進性を緩和する方策については、社会保障給付での手当て、税制全体での累進度の確保、低所得者向け還付付き税額控除制度などを含め、幅広い選択肢を検討する必要があると考えられる。
諸外国の付加価値税 P44

というわけで、付加価値税の税率をあげるのなら、所得税の累進率をあげるなり還付付き税額控除を認めるなりという逆進性緩和の方策が当然ながらつかなくてはならにゃーわけだ。こういうことをマスコミはぜんぜんいわにゃーけどな。


消費税をあげる場合のその他の前提条件としては

  • インボイス方式にしろ
  • 源泉分離課税をやめて総合課税に。金持ちはせめて諸外国並の負担をしろ。
  • 相続税などのストック課税をあげろ。カネを死蔵せずに回るようにしろ。
  • 能力と意欲のあるものは誰でも高等教育を受けられるようにしろ。
  • 公務員も議員も、もともと日本は数が少ない。削減は財政的に意味がないどころかマイナス。もっと行政サービスを充実しろ。
  • 労働法制を企業に遵守させろ。悪質な労働法違反は豚箱にぶち込め。

最後の労働法制については、厚生年金などの負担したくにゃーので、従業員を保険にかけにゃーという企業が中小零細にはごろごろしているからですにゃ。
これくらいやって、なおもカネが足りにゃーのなら消費税増税を考えてもいいにゃ。
でなきゃ話になんにゃーよ。こうした条件なしに消費税増税を叫ぶなんざ、意地汚くておぞましい豚の鳴き声でしかにゃー。
マスコミ様はジュニア新書程度の財政の基本もわかってにゃーんでにゃーの? それとも平気でウソぶっこいてんのかにゃ?


僕が間違ったこと書いてたら、是非ともトラバなりコメ欄でお教えくださいにゃ>読者諸賢