非常勤講師の悲哀と公務員ワークシェアリング

非常勤講師の悲哀

知りあいの高校美術講師がこの3月で首を切られることになりましたにゃ。ここここに出てきた僕の友達とは別人にゃんが。
彼女は困っておるよ。で、何とかできにゃーものかと、いろいろ考えてみた*1


まず、非常勤講師の置かれた状況をば。
セーイキなきコーゾーカイカクとやらで、教育支出も削りまくり。なので、公立高校の美術や書道の教師は基本的に「請負」(=非常勤講師)で済ませる流れになっていますにゃ。音楽の教師は必要なんだよね、校歌歌わせたりしなきゃならにゃーからな。
で、
この非常勤講師の待遇がヒデエ。

  • 時給は2千7百円ちょい。準備時間や交通費はでない
  • 5年〜10年勤めていても、いきなり首を切られ、保障はゼロ
  • 労働保険・社会保険・年金などの公的保険はいっさいきかない
  • ただで部活を見なければならない*2
  • 夏休み・冬休み・春休みの間は無給
  • 無給なのに展覧会などで引っ張り出される

時給3千円もにゃーのだよ、専門職なのに。1時間の授業の準備をするのに、何時間もかかることだってあるというのににゃー・・・・。しかも、1時間目と5〜6時間目とか、1日1時間だけとかいう無茶苦茶な時間割を強要されることすらありますにゃ。


正規職員でなければ地方公務員共済に入れにゃーという規定がありますにゃ。ただし、正規職員の3/4以上働いていれば政府管掌の健康保険と厚生年金に加入させる義務がありますにゃ。
で、このあたりが実際にどう運用されているかというと
教育委員会があり、その管轄に、公立α高校と公立β高校があるとしますにゃ。
ある非常勤講師が、α高校で16時間、β高校で16時間働いたとすると、合計で32時間あり、法的には健保・厚生年金へ加入ということになるはずなのだけれど、社会保険への加入にはならにゃー。ひとつの高校だけで条件を満たさなければ、保険加入にならにゃーそうだ。各高校単位で雇っているという理屈なんだろうけれど、立法趣旨を考えると、教育委員会が脱法行為をしているとしか思えにゃーんだけどな。
で、1校で一定以上の時間を働かせると、健保・厚生年金に加入させなければならにゃーので、生徒の要望が強くても美術の時間は一定以下に抑えられるということになり、非常勤講師は数校掛け持ちで、何らの社会的保障のにゃー生活を強いられることになるわけですにゃ。


トヨタやキャノンもヒデエけど、教育委員会様もなかなかどうして非人道的でいらっしゃいやがりますにゃー。

公務員人件費の問題

とはいえ、各教育委員会【だけ】を責めてもせんないことですにゃ。

によると


我が国の公務員数は、約538 万人、人口千人あたりでは、42 人となっている(公務員の範囲、定義については次頁以降参照)。総務省で公表されている公務員数(35.1 人/人口千人当たり)に対して、公益法人職員、地方自治体の非常勤・臨時職員等を含めたため、人口千人あたりで約7人程度職員数が増加することとなる。
なお、英仏米独の主要4ヶ国と比較すると、イギリス98 人(フルタイム換算職員3数78 人)、フランス96 人、アメリカ74 人、ドイツ70 人となっており、日本の公務員数の水準は相対的に低いといえる。


中略


OECD 統計では、各国の公務員総人件費(Compensation of employees)が横並びで比較可能である。対政府歳出比率で見ると、ドイツ16%、日本17%、イギリス19%、フランス26%、アメリカ28%の順となる。対GDP 比率では、日本6%、イギリス、ドイツ8%、アメリカ10%、フランス14%となる。わが国はイギリス、ドイツとほぼ同水準であるといえる。
日本の人口千人あたり公務員数は42 人と、イギリス97 人、ドイツ70 人と比較して低いことを考慮すると、両国と比較すると相対的に給与水準が高いことが推測される。


ふむふむ、公務員人件費総額については日本は先進国中最低レベル、しかし、各人の給与水準は高いということになるわけにゃんな。
これならワークシェアリングの余地があるのではにゃーのか?
現在538万人の公務員の数を、人口あたりの公務員数をドイツ並にすれば、350万人(!)以上の雇用が生まれることになるにゃんが。しかも、先進国中最低レベルの公務員人件費総額のままで、ですにゃ。ま、もちろんこんな単純な計算のままでいくとも思ってにゃーけどね。
しかし少なくとも、時間的にも労働強度もそんなにきつくなく、経済的にもそこそこ食える雇用が100万単位で作り出せるというのはガチではにゃーだろうか?



僕のいっているのは公務員の待遇引き下げではなく、あくまでワークシェアリングですにゃ。ドイツの公務員なみに働いて、ドイツの公務員なみの給料をもらえばいいといっているだけにゃんね。学校の先生なんかもすっげえ忙しそうだしにゃ。仕事量も給料も3/5ならいいんでにゃーの? ドイツではその給与水準で公務員が食えているわけで。人数を増やすことによって、きめ細かな行政サービスを実現することだって、できなくもにゃーだろう。
フルタイムの必要がにゃーことで、かえって働ける有能なヒトは多いはずだにゃ。

解雇規制の撤廃には賛成できない

雇用の流動化には賛成ですにゃ。しかし、解雇規制をゆるくするのはダメダメだろ。http://d.hatena.ne.jp/kagakaoru/20090128/1233155296でもいわれるとおり、格差が開くだけなんでにゃーのかな。
あくまでシロウト考えなんだけど、労働の需要が増えれば流動化も起こるのではにゃーのかな?
給料は高くにゃーが、安定していて仕事量もたいしたことなくて保障もしっかりしている雇用が、日本全国に300万生まれれば、それだけで雇用は流動化しにゃーかな?
あるいは仮に解雇規制を少し緩めたとして、公務員のワークシェアリングがあればその分は吸収できるという理路もありかも。

ひがまないで分け合おう

いろいろググっていて、何故公務員は、らくらく待遇なの -先日平日に、郵便局の友人A人と飲み- その他(行政) | 教えて!gooを見つけ、そのあまりのヒガミ根性にくらくらしましたにゃ。ブラック企業に勤める質問者が、公務員の待遇をひがみまくり、自分のヒガミ根性を肯定してくれる解答にだけ「良解答」をつけるという香ばしさ。
公務員とか労組とかを既得権益ガチガチとして攻撃するというのもよく見ますしにゃ。
しかし、公務員の待遇を目の敵にして、それを引き下げることを考えるのは愚昧ですにゃ。あの程度の待遇は当然のこととして、それをみんなで分け合うことを考えなければ。


いやね、つい20年前の就職活動でどんな会話がなされていたか僕はよくおぼえているんでさ。
「えー!? オマエ公務員やるの? ばっかじゃねーの? 給料安いしボーナス安いし残業代もまともに出ないし・・・なんで公務員なの?」
バブリーな当時は、ボーナス12カ月分支給とか、研修名目でバンバン海外旅行とかざらだったのですにゃ。今の40代あたりが「公務員は恵まれている」とか抜かしていたらマジにあざ笑ってやっていいよ。


ま、バブル時代が異常だったとしても、公務員の待遇はある程度一定なのに、毀誉褒貶の激しいことにゃんね。労組にしろ公務員にしろ、彼らの待遇を当然のものとみなし、みんなで分け合うことによって雇用の流動化をはかる余地はあるんではにゃーかな。
とにかく、非常勤講師とか現業で働いているヒトの待遇をなんとかし、巡り合わせが悪くてまともな職につけてにゃーヒトたちのためにも、公務員のワークシェアリングは有効だと思うんだけど、どないなもんでしょうかにゃー。

*1:もちろん、ここで書いたようなでかい話ではなく、現実的な相談にのってるよ

*2:補習名目で少しは出るんだけど、上限が決まっているそうですにゃ。その上限の4〜5倍は見なければならにゃーそうだ