図書館で排除の論理を実行するのはムツカシイ(追加資料、追記アリ

盛り上がってますにゃー、図書館ホームレス排除問題。

公立図書館は行政機関

村で話題となっている図書館ホームレス排除問題について、寒暖によるホームレスの健康上の危機については行政側に対応する義務があるということは、まあおおよそ同意されているっぽいようですにゃ。
憲法とは公権力の正当性を明らかにするためのものであるという側面があり、憲法に述べられているのは「国民の人権を守ります」という権力からの約束ですからにゃ。人権保護をしない権力に存在意義はにゃーんだな。したがって、行政権力に人権保護の義務が課せられることは自明といえますにゃ。


さて、この問題で「村のサヨク」を批判しているヒトタチの論調の中には


全てを図書館に押し付けてる感が凄く強いんだよね。


http://d.hatena.ne.jp/Lobotomy/20080901/p1


というものもありますにゃ。
僕も個々の図書館員には同情を禁じえにゃーが、そのことと行政組織の一環として公立図書館があることをごっちゃにしてはならにゃーだろう。

  • 公立図書館は行政機関

なんですよにゃ。


「ホームレスの健康を保持するのは図書館の役割ではない」
という声が聞こえますにゃ。にゃるほど、行政のたらい回しはオッケーですか?


この問題さ、行政のツケが行政機関のよわいところ(あるいはもっとも公的なスタンスの行政機関)に出ているという話だろにゃ?
あくまで行政が責任をとれ、ということでなんかおかしいの? id:Romanceはそういっているように読めるんだけど。
図書館は行政機関の一端である責任は免れようがにゃーのでは? 
「これは行政の責任なので、行政機関である図書館の責任ではありません」はにゃーだろ。


不当な排除、正当な排除


公園や図書館はお前の家じゃない - 猿゛虎゛日記(ざるどらにっき)において


ホームレスの「私的空間」からの排除は、すでに完了しているのです。それは残念ながら当たりまえのことです。

と指摘されていますにゃ。


私的領域と公的領域の区別というのは基本のはずですにゃ。


自分の部屋で、裸でいようがキムチを全身にぬりたくってオナニーしようが自由。
それに
「俺の部屋にはホームレスも朝鮮人も黒人も立ち入り禁止だ、排除する」
はい、どうぞどうぞ、ご自由に。私的な信念として差別主義者であることは仕方にゃーし、自分の部屋で誰を排除してもかまわにゃーだろ。僕だって馬鹿や卑劣漢を差別して友人から排除しているしにゃ。


しかし、公的領域でそういうことをいったらマズイよにゃ。


naoya_fujita 排除がいけないという論を立てるなら、東大を無試験にしよう。
naoya_fujita するとどうなるか。「東大」という名声目当てに、日本語レベルで問題のある奴、議論にならない奴、暴力に訴える人、統合失調症患者、犯罪者、悪臭を放つ人も、当然来るだろう。
naoya_fujita それに耐えなければいけないはずだ。排除を批判するなら。
naoya_fujita そもそも君の充実した大学生活は、排除の上に成り立っているんだよ。


http://d.hatena.ne.jp/naoya_fujita/20080901/1220230052


はい、馬鹿の見本ですよにゃ。
試験に合格し、学則を守っている者であれば、「日本語レベルで問題のある奴、議論にならない奴、暴力に訴える人、統合失調症患者、犯罪者、悪臭を放つ人も」受け入れなければならにゃーんだよ、大学は。(まあ、学則の縛りがあるので、犯罪者は追い出されるだろうけど。あと、「暴力に訴える人」は大学紛争時には重宝されていたみたいだけどにゃ)。
つまり、大学は入学試験による選別と学則の遵守以外の恣意的基準で排除や選別をしてはならにゃーの。
大学ってのは、ある明文化された基準によって合理的な「排除」「選別」がなされている公的機関の一例ですにゃ。


さて、図書館だ。
「ホームレスは図書館に本来の目的で来ていない、だから排除してよい」という意見があるようですにゃ。
例えば


どんな立場の人であろうと、図書館を利用しない人や機能を妨げる人とかは居てはいけないと思う。使うな じゃなくて、妨げないで利用するべき ということ。


http://d.hatena.ne.jp/SeiSaguru/20080831/1220180142


一見すると正論だにゃ。しかし、考えてみるとこれもムツカシイ。


例えば、僕の職場の近くに図書館があるので、外回り時に暑いときには涼をもとめて図書館に入ることがよくありますにゃ。雨宿りをすることもあるにゃ。また、図書館で本を読んでいて、ついうとうとしてしまうこともあるにゃ。
僕は夏場は毎日風呂を浴びていますし、着替えもしておりますにゃ。
ここで問題が2点。

  • 1)涼をもとめたり雨宿りをする僕のようなものは排除されるべきか
  • 2)(1)で排除すべきだとした場合、僕が図書館に何をしにきているのか、どうやって判断するのか


(2)がムツカシイだろ?
僕とホームレスのおっちゃんが、同じように涼をとりに図書館に入館してだらだらしていたとして、ホームレスのおっちゃんだけが排除されたとしたら、それは確かに「差別」だよにゃ。
つまりね
目的外使用の排除という名目はいいのだけれど、それはすべての人に公平に一律に適用されなければならにゃーはずなのに、現実には身ぎれいなヒトは不問に付され、ホームレスだけが排除されるということになったらマズイだろ?
かといって、図書館に入館するヒトにいちいち目的を聞いたり、何をしているかを監視するってのも、利用者としてはやりにくくてしょうがにゃーよな。
目的外仕様の排除ってのは現実には困難なのですにゃ。


行政権力のタテマエから敷衍して考えてみれば、図書館からホームレスを排除する論理を実行するのはなかなかムツカシイことはわかると思うんだけどにゃ。

最後に

誰でも立ち入れることをタテマエとした公領域においては、「行為」によって排除することは正当であっても、「存在」によって排除するのはマズイのだにゃ。
図書館でオナニーしたり砂遊びしたりケンカしている馬鹿は、その行為を理由に排除してよろしい。しかし、汚いとか臭いとか怖いとかいうのは、存在のあり方に対する評価でしてにゃ。存在のあり方における評価で排除・選別するのは、差別としかいいようがにゃーんだよ。

追記 3日12:30ごろ

ブクマコメントで、id:mic1849から資料を教えていただきましたにゃ。多謝!
必見の資料だと思うので、こちらでもリンクして多くの人の目にふれるようにしますにゃ。
http://www.okiu.ac.jp/sogobunka/nihonbunka/syamaguchi/sanya.html
おお、山谷の図書館スゲエ!
酒飲んで博打して泥酔して糞尿垂れ流しかー・・・・・これは僕も逃げる。
簡易宿泊所建設に地元住民が反対して、その結果図書館が作られることになり、その図書館が山谷労働者に占拠されてしまったというのは皮肉にゃんなあ。


http://www.digital-narcis.org/johoshak_free_font/11/sen.pdf
まず、「問題行動」への対処は図書館における危機管理として必須項目であるということ。そしてそれは「図書館の自由」という特殊性に由来するものであるということ。メリケンでは「クライマー事件」を経て、問題行動に対処するガイドラインが広く作成されたことなどがよくまとめられていますにゃ。


利用規則の中では、どこまでが許容の範囲で、どこからが問題行動とされるのかという、リスクアセスメント(危機の許容範囲)を規定しなければならない。さらに、リスクアセスメントを職員共通の認識として、どの職員でも同一の対応がなされるようにしなければならない。

という指摘なんかも重要だと思うにゃ。

  • 図書館現場としては、図書館運営におけるリスクマネジメントの問題であって、「図書館は関係ありません」ではすまないということ
  • もう1段階上の行政レベルにおいては、ホームレス問題の放置は許されないこと

資料とともに、上記のことを主張しますにゃ。
これで、ブクマコメへの応答にかえさせていただきますにゃー。